2017年から、足かけ8年あまりにわたって少しずつ作り続けてきた自分の暗号資産自動売買システム。その設計と検証のしかたをまとめた解説書(上巻)を Zenn で公開しました。BTC/ETH を対象に、売買ロジック・パラメータ最適化・資金配分までを、コードと実測値で解説した実装 How-to 本です。
そしてこの本、本文も挿絵も表紙も AI が書いています。中身を紹介したあと、その作り方も書きます。
この記事でわかること
- 公開した技術書『個人で作る暗号資産自動売買システム【上巻 アルゴリズム編】』がどんな本か
- AI が執筆・挿絵・表紙・品質チェックまで担って1冊を出版した制作の舞台裏
- システムの開発でも本の執筆でも AI を使い倒しつつ、人間が方針と最終判断を持つ役割分担
どんな本か:設計と「失敗」の透明な記録
公開したのは 『個人で作る暗号資産自動売買システム【上巻 アルゴリズム編】』(Zenn・¥3,000)です。
最初の2章(導入と「システムの成績と頭脳」)は無料で読めます。
- 第1章 はじめに ―本書の読み方と対象読者―(無料)
- 第2章 システムの成績と「頭脳」(無料)
- 第3章 バックテストの作り方 ―本番と同じコードで過去を再生する―
- 第4章 パラメータ最適化① 探索編
- 第5章 パラメータ最適化② 目的関数と過学習回避
- 第6章 動的資金配分 ―BTC と ETH にいくら配るか―
- 第7章 上巻のまとめ ―ここまでの達成と、下巻へ―
約3年分の取引を Python と GPU 搭載 PC で高速にバックテストし、戦略の検証から最適化、資金配分までをコードと実測値で追えるようにしました。
軸は「うまくいった話」ではなく、設計と失敗の透明な記録です。1,800 行かけた相場レジーム判定ロジックを過学習で丸ごと廃案にした話。最適化が「98% のドローダウン」を良いスコアと誤判定した話。こうしたうまくいかなかった過程を、各章で主役級に扱っています。売買の"頭脳"も、派手な AI 予測ではありません。ボリンジャーバンドと一次回帰トレンドという枯れた指標を、優先順位つきのルールに整理しただけです。
この「派手な予測に頼らない」方針は、最初からの信念ではなく失敗から逆算した結論です。出発点は2017年。最初は TensorFlow で価格の履歴を学習させる機械学習を試しましたが、まったく機能しませんでした。"未来を当てにいく"やり方で手痛く失敗して、枯れた指標に落ち着いた。「AI に相場を予言させない。でも設計・実装には使い倒す」という本書の姿勢は、この8年越しの体験から来ています。
実装まわり——取引所 API の差異の吸収、複数マシンの使い分け、複数ユーザー×複数取引所の同時運用など——を扱う下巻(システム編)(¥2,000)は近日公開予定です(公開でき次第このページにリンクを追記します)。
制作の舞台裏:役割の違う AI たちで作る
本作りには、役割の違う AI が何人か関わっています。
- (1) 技術情報担当(システムの開発者)兼 技術レビュア:本文に必要な事実を出し、技術的な正しさを検める。手元の素材にない事実は創作させず、実コード・実データで裏を取る担当です。
- (2) 相談役 兼 文章レビュア:出版プラットフォームの選定や執筆方針など、"外に出す"観点での壁打ち相手。公開前に文章もレビューします。後述の値付け・タイトルのやり取りは、この相手との議論です。
- (3) 挿絵担当:章扉のイラスト8点を担当。実体は別ブログ ai.andhandworks.com の"高校生 AI"が、アルバイトで描いています。
- (4) 執筆担当:各章の本文を書きます。
表紙は、背景を (3) が生成し、書籍名(日本語タイトル)は人間が載せました(AIで作ると「ありがち」な表紙になるので)。公開前には、禁止語や機微情報(口座名・ホスト名・IP・鍵など)の混入チェックを全章へ自動で通すゲートも設けています。
書く・描く・調べる・検める・相談するを役割ごとに別の AI が担い、人間はその出力を判断する。そういう分担です。
人間の役割:方針を決め、AI を“作り手”として使う
人間の役割は、自分で手を動かすことから、方針を決めて AI に作らせることへ移りました。システムでも本でも同じです。本の制作で人間が決めたのは、次のような点です。
- ゴールと出版構成:2巻立て・章割り・無料範囲。
- 価格・タイトル・検索キーワードの最終決定。
- 創作の方向づけ:表紙のモチーフ(図面・タイマー・コインの山、サーバやマイコンなど)を具体的に指示する。
- 事実の最終確認と公開操作:公開のトグルを押すのは人間。
この関係は一方通行ではありません。AI の提案を人間が却下することも、人間の案を AI が直すこともありました。実例を2つ。
例1. 値付け:「2,980 円」に AI が待ったをかけた
価格を相談したとき、AIは「内容的に3,500円相当だが実績がないので3,000円」と提示してきました。私は「2,980 や 3,200 はどうか」と出しました。AI は「端数価格は情報商材っぽく見えてブランドを損なう/心理的効果も技術書では薄い/そもそも Zenn は100円刻み」と指摘し、きりのよい価格を推しました。結果として上巻は ¥3,000 に。
例2. タイトルと検索キーワード:人間が AI 案を却下した
タイトルのキーワード案として AI は「Python / BTC / ETH」を挙げました。私は「BTC・ETH の略語は初学者に通じない」「上巻の本質は個人でという点ではない」と反論し、AI が修正。逆に私が出した「ゼロから作る」案は、自分でパクリっぽいと感じて取り下げ、「個人で作る」に落ち着きました。検索キーワードでも、AI が推した「バックテスト」を私が「検索母数が小さい」と返し、最終的に「機械学習」へ。こういうやり取りの積み重ねです。
ちなみに、方針さえ決めれば実作業は AI が進めてくれます。だからこの本のやり取りの一部は、筑波山を登りながらスマホでやっていました。山頂で景色を眺めつつ章立てを直す、くらいの距離感で作れます。
中身と作り方が、同じ思想でできている
この本の主張は「派手な予測に頼らず、設計・検証・反復で地道に作る」です。その本を作るプロセスも、同じでした。AI に相場は占わせない。でもシステムの実装にも本の執筆にも、AI を作り手として使い倒す。未来を当てさせず、隣で手を動かす開発者・執筆者として使う。中身と作り方が同じ思想でできている——これが、ありがちな「AI で書きました本」との違いだと思っています。
読んでみる
上巻はこちら → 個人で作る暗号資産自動売買システム【上巻 アルゴリズム編】(Zenn)。第1章・第2章は無料で読めます。実装寄りの下巻(システム編)は近日公開予定です。
※本記事および本書は特定の暗号資産の売買を推奨するものではなく、投資助言・勧誘を目的としたものではありません。記載の成績・数値はすべて過去データによるバックテスト/最適化の結果であり、将来の利益や実現損益を保証するものではありません。暗号資産の取引は価格変動リスクを伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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